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福岡地方裁判所行橋支部 昭和57年(ワ)86号 判決 1983年3月08日

原告

田辺みちよ

被告

小倉交通株式会社

主文

被告は原告に対し、金四六万七〇六〇円及び内金四一万七〇六〇円に対する昭和五四年八月一二日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

原告のその余の請求を棄却する。

訴訟費用はこれを二分し、その一を原告の負担、その余を被告の負担とする。

この判決は第一項に限り仮に執行することができる。

事実

第一当事者の申立

一  原告

1  被告は原告に対し金八七万〇九八二円及び内金七七万〇九八二円に対する昭和五四年八月一二日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  仮執行の宣言。

二  被告

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告が昭和五四年八月一二日夕方、北九州市小倉北区黄金町において、被告会社のタクシーに乗車中、右タクシーとライトバン様の車両が衝突する交通事故(以下たんに本件事故という)が発生した。

2  右タクシーは被告が所有し保有するものであるから被告は自賠法三条により原告の受けた損害を賠償する責任がある。

3  原告は本件事故により頸部捻挫、左背部打撲傷の傷害を受け、湯川総合病院で応急措置を受け、入院を勧められたが幼児がいるため帰宅した。その後、宮城整形外科医院に昭和五四年八月一三日から同年九月八日まで二、三日おきに通院し更に岩本整形外科医院に同年九月一二日から翌五五年七月一六日まで通院した。

4  原告は本件事故により次の損害を受けた。

(一) 交通費 三万五八一〇円

妊娠中事故にあつたのでタクシーで病院に通院し警察の取調に行つた。その合計は三万五八一〇円である。

(二) 治療費、診断書料 一二五〇円

(三) 休業補償 四三万三九二二円

原告は主婦として一家の家事労働一切を行い、かつ田辺組に勤務し、月六万円以上の収入をえていたものである。したがつて少なくとも賃金センサス昭和五二年女子労働者平均賃金以上の収入をえていたものとみなすべきである。

ところが、原告は本件事故のため昭和五四年八月一三日から同年一一月二四日まで一〇四日間仕事ができず、その間の収入を失なつた。

(101,900円×12月+300,100円)×104/365=433,922円(円未満切捨)

(四) 慰謝料 三〇万円

原告は妊娠中に本件事故に会つたものであり、精神的苦痛、肉体的苦痛は大きく、慰謝料は三〇万円が相当である

(五) 弁護士費用 一〇万円

5  よつて原告は被告に対し金八七万〇九八二円及びこれに対する弁護士費用を除く内金七七万〇九八二円に対する本件事故発生の日である昭和五四年八月一二日から完済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

二  請求原因に対する認否

請求原因1、2の事実は認める。同3、4の事実は不知。

第三証拠関係〔略〕

理由

一  請求原因1、2の事実は当事者間に争いがなく、被告は自賠法三条により原告の受けた損害を賠償する責任がある。

二  成立に争いのない甲第一ないし第三号証、乙第一ないし第四号証及び原告本人尋問の結果を総合すれば、原告は本件事故により頸部捻挫、左背部打撲傷の傷害を受け、湯川総合病院で応急措置を受け、入院を勧められたが幼児がいるために帰宅したこと、昭和五四年八月一三日から同年九月八日までの二七日間宮城整形外科医院に通院(実日数五日)し、更に岩本整形外科医院に昭和五四年九月一二日から昭和五五年七月一六日までの三〇九日間通院(実日数五日)したこと、又本件事故当時妊娠七ケ月であつたため切迫流産となり、二週間安静療養を要したことが認められる。

三  損害額について判断する。

1  交通費 三万五八一〇円

成立に争いのない甲第六号証の一ないし一五及び原告本人尋問の結果を総合すれば、原告は本件事故にあつたため通院及び警察の取調のためにタクシーを使用したことが認められ、その合計三万五八一〇円を損害と認める。

2  治療費、診断書料 一二五〇円

成立に争いのない甲第五号証及び原告本人尋問の結果を総合すれば、原告が本件事故により切迫流産となり薬師寺医院で治療を受け、診断書をもらい一二五〇円を支出したことが認められ、この額を損害と認める。

3  休業補償 一三万円

原告本人尋問の結果及びこれにより真正に成立したものと認められる甲第四号証を総合すれば、原告が本件事故当時田辺組に勤務し、月六万円の収入を得ていたこと、本件事故のため昭和五四年八月一三日から同年一一月二四日(死産した日)まで仕事ができなかつたことが認められる。しかしながら原告は妊娠中であり、少くなくとも原告本人尋問の結果によつて認められる出産予定日である昭和五四年一一月二七日以前六週間は休養すべきであることを考えるとその休業日数は六五日間と認めるべきである。

原告は、同人が田辺組に勤務するかたわら家事労働にも従事していたものであり、少なくとも女子労働者の平均賃金以上の収入をえていたものとみなすべきであると主張するが、前記認定した原告の通院状況に鑑みれば、原告が家事労働が不能となるほどの傷害を受けたとまでは認められないから、原告の損害は月六万円にとどまるものと認めるべきである。

従つて原告の受けた損害は一三万円となる。

6万円÷30日×65日=13万円

4  慰謝料 二五万円

原告は妊娠中に本件事故に会い、前記傷害を受け、切迫流産となつたことは前記認定のとおりであり、その精神的、肉体的苦痛を慰謝するには二五万円が相当であると認める。

5  弁護士費用 五万円

本件訴訟の難易、認容額、弁護士報酬規定を考慮し、五万円を相当因果関係のある損害と認める。

四  よつて、原告の本訴請求は被告に対し金四六万七〇六〇円及びこれに対する弁護士費用を除く内金四一万七〇六〇円に対する本件事故発生の日である昭和五四年八月一二日から完済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるので認容し、その余は失当として棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条を、仮執行の宣言につき同法一九六条を各適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 草野芳郎)

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